2013年10月25日金曜日

えん罪事件の再審に背を向ける司法 名張毒ぶどう酒事件/猪野亨弁護士

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"Title : えん罪事件の再審に背を向ける司法 名張毒ぶどう酒事件/猪野亨弁護士
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"Tags : 猪野亨弁護士,えん罪,再審,再審請求,司法
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えん罪事件である名張毒ぶどう酒事件。
 2005年4月に名古屋地裁で再審開始決定が出てから既に8年が経過、最高裁が再審開始決定を取り消した名古屋高裁の取消決定を是認しました。
「名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求第2次特別抗告審決定についての会長声明」(日弁連2013年10月18日)

 最高裁のこの間の姿勢は一貫しており、高齢となった再審請求者が死亡するのを待っているという姿勢がありありです。

 少なくとも現在の視点において名張毒ぶどう酒事件をどのように裁判がなされるべきなのかどうかが正面から問われています。
 本来、再審請求の場合には一度、なされた裁判を覆すということから、新たな証拠が必要とされています。その新たな証拠とそれまでの証拠を評価し、疑わしきは罰せずの原則を当てはめるということになります。
 しかし、それが正当化できるためには、前提として最初の裁判がまともに行われていたということが言えなければなりません。
 自白偏重の無理矢理、有罪にしてしまったような裁判を前提に「新証拠」を要求するのは問題外だということです。
 過去に起きたえん罪事件の構造は、無理矢理、自白させ、捜査機関によって作文された自白調書によって「有罪」とするのがお決まりパターンでした。
 「自白」に依拠するということは物証を得られないことの裏返しなのですが、これが非常に恐ろしいということなのです。
 捜査機関による思い込みだけで終われば、まだいいのですが、裁判所までがそれを是認してしまうことがさらにこの恐ろしさを増幅させます。
 現在、名張毒ぶどう酒事件のような証拠構造(自白偏重)で起訴された場合、十中八九、無罪判決となるでしょう。無罪でなければおかしいのです。あるいは起訴もできないかもしれません。
 今回の再審請求も現代の視点では到底、有罪にできないものについてまで門戸を閉ざすことの是非が問われているということを知るべきです。
 それを未だに最高裁は、「合理的な科学的根拠のある鑑定を基にしており、自白の信用性も揺るがない。高裁判断は正当」と自白偏重を追認しています。

 古い時代の刑事手続きだから仕方ない?
 そんなことを言ったらもっと前の事件も同じように「無罪」にする?

 今、生きている人の救済が考えられないようではダメです。決して古い時代の刑事手続きではありません。
 少なくとも日本国憲法下で起きた事件で、この放置は悪行です。

 先日、帝銀事件の元死刑囚の養子である方が亡くなっため再審請求を引き継げなくなったと報道されていました。この帝銀事件はこのまま闇に葬られようとしています。
 戦後に起きたえん罪事件が放置されたまま、刑事裁判は次にどこに行こうとしているのか、刑事訴訟手続きが「改善」されてきたとはいえ、まだまだ発展途上にある中で、過去の手続きへの姿勢が問われているのです。

 その意味では姿勢が問われているのは裁判所だけはありません。検察庁、法務省にも向けられているのです。
 検察官は「有罪」維持で頑張ればいいというものではありません。検察官は公益の代表とされているのであり、有罪屋ではないのですから、適正な刑罰になっているかどうかの検証が必要です。
 戦後のえん罪事件を見る限り、裁判所だけの問題ではなく、検察庁(法務省)の問題でもあることは明白です。
 現行法上、再審請求できるのは特定の遺族に限るという制度もどうかと思いますが、他方で検察官も再審請求をできると規定されているのです。
 少なくとも検察官は有罪判決に耐えうる証拠がないような事件については再審請求をすべき職責があると言えます。
 検察官が名張毒ぶどう酒事件や帝銀事件などを本気で「有罪」と思い込んでいるとしたら、それもまたひどい病理だと思います。

軍法会議はえん罪だらけだったでしょうね。
「死刑という国民動員への脅迫 石破茂自民党幹事長」


引用:えん罪事件の再審に背を向ける司法 名張毒ぶどう酒事件




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